ろへ、Sさん来庵、酒と下物とを持つて――酔ふ、私は酔うて睡つてしまつた。
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□遊蕩のための遊蕩のよろしさ!
□私には好悪はあるが美醜はない、浄穢不二にはなりきれないけれど愛憎はあつさりしてゐる。
□感傷は反芻する[#「感傷は反芻する」に傍点]。
孤独は散歩する。
憂欝は中毒する[#「憂欝は中毒する」に傍点]。
□空は風ふく。
私は咳する。
[#ここで字下げ終わり]
二月八日[#「二月八日」に二重傍線] 晴。
風、風、風はほんたうにさみしい[#「風はほんたうにさみしい」に傍点]!
昨夜の余得として、酒がある、カマボコがある、バツトがある、――ありがたく頂戴して今日の憂欝[#「今日の憂欝」に傍点]を消散せしめる。――
あるだけ飲んで食べて、そして寝る、としよりの、独りぼつちの怠けものの気楽さだ。
終日、風を聴く。――
何でもない事、その事が身心にこびりついて離れない不快、風が屋根の藁を吹き散らして貧乏な私を悩ます。……
私はリヨウマチのおかげで、おとなしく閉ぢ籠つてゐます、――といふやうな消息の文句はあまりおもしろくない。
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