ら今日も賀状を書く、ノンキだね。
六時のサイレンが鳴つてから、学校の宿直室に樹明君を訪ねる、いつもにかはらぬ顔を見て安心した(チユウリツプの球根が身代りになつたらしい!)。飯をよばれ酒をよばれ、そして泊らせて貰ふ。
明るい電燈のあかりで、火鉢のあたゝかさで、めづらしく原稿――独語[#「独語」に白三角傍点]六枚――を書きあげる。
落ちついて、のんびりして、愉快になつた。
[#ここから1字下げ、折り返して2字下げ]
□何となく老人に心ひかれるやうになつた私は、私自身老人になつてゐた!
□彼は酒が好きな点では日本人としての幸福をめぐまれてゐるが、餅を好かないのは大いなる不幸だ。
□足を病んで足が二本あることをしみ/″\有難いと思つた。
□生地で生きなければ創造することは出来ない[#「生地で生きなければ創造することは出来ない」に傍点]。
□自殺は彼の最後の我儘だ。
□五日一草、十日一石といふ、私は一生一水[#「一生一水」に傍点]でありたい。
□石の沈黙、藪の饒舌、そして人間の矛盾。
 太陽の愛撫、小鳥の明朗。

□いつも最後の晩餐[#「最後の晩餐」に傍点]だ。
 いつも最初の朝飯だ。
□独言は
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