あたりまへすぎるあたりまへだらう。
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 二月五日[#「二月五日」に二重傍線] 晴――曇。

けさはだいぶ関節炎がよくなつたらしい、それではかへつて困る、幸福な不幸から不幸な幸福へ転じては、いよ/\ます/\不幸になる!
もう蕗のとうが出てゐるさうな、それを聞いたゞけでも早春を感じる。
食後の散歩がてら、蕗のとうを探して近在をぶらつく、出てゐた、出てゐた、去年も出たところに出てゐた、よい蕗のとうだ、よい香気だ、さつそく佃煮にする、句にする。
麦がなくなつたので、久しぶりに米だけを炊く、飯の白さが身心にしみとほるやうであつた。
落ちついてゐるつもりだけれど、事にふれ折につけて動揺する(今日だつてさうだ)、自分によく解つてゐるだけそれだけ苦しい。
ぶらりぶらり家のまはりを歩いてゐると、うちの蕗のとうも落葉の中から逞ましいあたまをのぞけてゐる(黎々火君が持つて来て植ゑた秋田蕗である、自然生の蕗は毎年ずつとおくれて、貧弱なとうを出す)。
蕗のとうが咲いたのもおもしろい。
暮れてゆくけはひ、暮れ残る梅の花、何となく悄然としてゐるところへ樹明君から呼び出しの使者が来た、さつそ
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