□不幸な幸福――泥酔[#「泥酔」に傍点]のやうな。
 幸福な不幸――悲しい健康。
□酒飲の楽しい矛盾[#「楽しい矛盾」に傍点]。
□故郷忘じ難し、そして留まり難し。
 血肉は離れて懐かしがるべし。
□私は社会の疣[#「疣」に白三角傍点]だ、瘤[#「瘤」に白三角傍点]にはなりたくない。
 癌[#「癌」に白三角傍点]にはなれさうもない。

□食べる物がなくなつたとき、Kさんが食べる物を持つて来て下さつた、Kさんありがたう、そして私は天地人[#「天地人」に傍点]に感謝する。
□食慾は人間最初の慾望で、そして最後の慾望だ、赤児は生れるとすぐ乳房を吸ひ、老人はいつでも何でも食べたがる。
□世尊良久[#「世尊良久」に傍点]、まことにありがたい態度である。
□この生活、この心境はなか/\解つてもらへない、解るまでには三十年の痴愚[#「三十年の痴愚」に傍点]を要するのか、私自身のやうに。
□世を捨てたなどゝうぬぼれてはゐない、世に捨てられたことをはつきり知つてゐる。
□老人はよく独り言をいふ、愚痴な人はよく独り言をいふ、独り者が独り言をいふのはあたりまへだ、愚痴で老いぼれの独り者が独り言をいふのは、
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