しい、さびしい。
おいしい昼餉、樹明君ありがたう、私は天地人[#「天地人」に傍点]にお礼を申上げる。
麦飯をたらふく食べるからだらう、やたらに屁が出る、屁を放つてをかしくもない独り者だが、何だかのんびりする、屁は孤独な道化者か[#「屁は孤独な道化者か」に傍点]!
髯が伸びて少々邪魔になりだした、気にかけるな、気にかゝるやうなら剃り落してしまへ。
そろ/\罰があたる頃だと思つてゐたら、左足の関節が痛みだした、しかし、私としては、痛みが激しくならないで起居不能にならない限りは、不幸でなくてむしろ幸福である(悲しい幸福、みじめな仕合でもあらうか)。
昼も夜も読書三昧、しづかな幸福であつた。
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□ナムアミダブツ、ナムアミダブツとつぶやきつぶやき殺してゐる、殺しつつナムアミダブツといつてゐる、――それが人間といふものだ!
□オモヒデはトシヨリのキヤラメル[#「オモヒデはトシヨリのキヤラメル」に傍点]
□意志を忘れて来た男
意志だけ持つてゐる女
□老顔のよさは[#「老顔のよさは」に傍点]雨露に錆びた石仏のやうなものだらう、浮世の風雪が彼を磨いたのだらう。
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