、庵は涼しい、極楽々々。
陰暦六月十五日、とても良い月だつた、放哉の句をおもひだした。
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こんなよい月をひとり見て寝る
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 七月廿三日[#「七月廿三日」に二重傍線] 晴。

妙な夢見がつゞく、身心がみだれてゐることを知る。
夏は夏らしく[#「夏は夏らしく」に傍点]、私は私らしく[#「私は私らしく」に傍点]。
身辺整理、――洗濯、裁縫、等々。
徒然草鑑賞、兼好法師は楽翁よりも段ちがひの文人だ。
午後、寝ころんで読書してゐるところへ電報来、後藤さんが帰省の途次立寄るといふ、六時の汽車で来て下さつた君を駅に迎へてうれしかつた、同道して一応帰庵、それからまた同道して山口へ行く、途中湯田で一浴、一杯ひつかけさせて貰ふ、そして周二君を訪ねる、三人で街を歩いて、蕎麦とビールとの御馳走になり別れて戻つた。
『二人寝る夜ぞたのもしき』といつた風に寝た。

 七月廿四日[#「七月廿四日」に二重傍線] 曇――晴、また曇つて時々雨。

三時頃目が覚めて四時過ぎ起床。
後藤さんは早朝出立、ほんたうにすまなかつた、いつもこれほどではないのに、こんどばかりは文字通りに
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