声である。
午後――学校へ――米屋へ――酒屋へ。
米はありがたく酒はうまし、私の目下の慾望はどうかして、米一斗酒一斗[#「米一斗酒一斗」に傍点]備へたいことである、その願求がなか/\実現されない、そこがかへつてよいところだらう。
物価騰貴――日用品が高くなるのは私にもこたえることである。
北支風雲ます/\急、これも私にこたえる。
旅[#「旅」に傍点]、旅[#「旅」に傍点]、このスランプを救ふものは旅の外にはない[#「このスランプを救ふものは旅の外にはない」に傍点]、とも考へる、夏のをはりからまた四国へでも渡らう。
アルコール二十銭のおかげで、ぐつすりと寝た。
地獄極楽[#「地獄極楽」に白三角傍点]、それが人生だ。

 七月廿日[#「七月廿日」に二重傍線] また曇る、晴れさうにもある。

土用入。
けさは朝寝だつた、起きて間もなく六時のサイレンが鳴つた。
新聞が来た、郵便が来た、さてそれから。――
熊蝉が鳴く、真夏の歌だ、油蝉も鳴きだした、それは残暑の声だらう。
胡瓜の花は好きな花だ。
夾竹桃はうつくしい、花も葉も、あまり好きではないが。
めづらしく裏山で蜩が鳴く、かな/\かな/\好きな
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