[#「産」に「マヽ」の注記]のまゝで死んでゐた、私は自然のいのちのすがた[#「自然のいのちのすがた」に傍点]そのままを観たのである。
家のまはりに柿の木[#「柿の木」に傍点]、野菜畑に大根[#「大根」に傍点]がなかつたならば、私たちの秋はどんなに淋しいであらう。
しみ/″\味ふ酒[#「しみ/″\味ふ酒」に傍点]、さういふ酒だけを飲む私にならなければならない。
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十一月二十日[#「十一月二十日」に二重傍線] 日本晴だ。
なるやうになつてゆく[#「なるやうになつてゆく」に傍点]、――これが私の最後の唯一の生き方[#「私の最後の唯一の生き方」に傍点]であることが解つた。
実人さんから干魚をたくさん頂戴した、干魚そのものは歯のない私には堅すぎるけれど、その情味のやわらかさは、ありがたし/\。
夕飯を食べて、ランプを点けて、一服やつてゐるところへなつかしい声――敬君だ、わざ/\生一本と汽車辨当を携へての御入来である、さつそく飲んで食べた、……それから街へ、……をんな、をんな、うた、うた、……ほろ/\とろ/\、……F屋で酔ひつぶれてしまつた!
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