四日」に二重傍線] 曇、時雨。
なか/\降らない、降りさうなものだ、降つてもらひたい、と空を眺めてゐるうちに、ぽつり/\しぐれてきた、よい雨だ、何十日ぶりかの、雨らしい雨だ、刈入には気の毒でないでもないが、畑の物は助かつた。
うまい朝飯、いはゆるうまいものは何もないけれど、飯だけでもうまい/\。
昼飯にも夕飯にも塩雑魚をあぶつて食べる、なか/\よい味である、それにつけても、噛み砕く歯が欲しい。
今日は酒なしデー、しめやかな日だつた。
鈴虫が一匹、そこらに生き残つて鳴きつゞけてゐる、生きものの悲壮な声[#「生きものの悲壮な声」に傍点]である(俳句もさういふ声でありたい)。
――書きたくてたまらない手紙、書かなければすまない手紙、その手紙が書けないのである、書いても出せないのである、――過去の放縦、不始末が口惜しい、――憂愁懊悩たへがたし。――
醜怪な夢を見た。……
[#天から4字下げ]二人の無用人[#「二人の無用人」に傍点](私とNさん)
十一月五日[#「十一月五日」に二重傍線] 晴。
私としては朝寝だつた、六時のサイレンを聞いてから起床、夜が長く日が短かくなつたものだ。
秋も老
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