いた、私も老いた。
いよ/\三八九[#「三八九」に傍点]を復活することにきめた、身心を整理するにはさうするより外に方法がないことが分つた。
過去を清算せよ[#「過去を清算せよ」に傍点]、一切を整理せよ[#「一切を整理せよ」に傍点]。
午前、I酒店の主人が空罎をあつめに寄つて、しばらく世間話、彼はよい娘を持つてゐる、のんべいだ、いろ/\の苦労をしたらしい。
しみ/″\食べること[#「しみ/″\食べること」に傍点]、――味ふこと[#「味ふこと」に傍点]。
今日も酒なし、飯はある!
風が初冬らしく吹きはじめた。
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生死はもとより一大事なり、されば飲食一大事なり、男女のまじはりも一大事なり。
風は風なり、水は水なり、雲は雲なり、花は花なり、そして風は水なり、雲なり、花なり。
人は人なり、草は草なり、虫は虫なり、犬は犬なり、そして人は草なり、虫なり、犬なり。
百舌鳥よ、こほろぎよ、がちやがちやよ。
草よ、柿よ、石よ。
雲よ、水よ。……
[#ここで字下げ終わり]

 十一月六日[#「十一月六日」に二重傍線] 晴、――曇、――雨。

冬が来た、冬ごもり[#「冬ごもり」に傍点]の
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