点]。
昨日の酒が少々残つてゐる、ちびり/\飲む、ほんのり酔ふ、その元気でポストへ、ついでに湯屋へ。
秋ふかい顔[#「秋ふかい顔」に傍点]を剃つた、野の花を摘んで御仏に供へた。
途上、Tさんの親切な挨拶を受けて、私は私を叱つたことである、――恥を知れ、自分を知れ、老を知れ、自然を知れ。――
雲も私もしづかに暮れる、誰も来なかつた、郵便やさんも来なかつた。
今夜も寝苦しいとは、……徹夜推敲、……月がおもてからうらへまはつた。
咳が出て困る、夜ふけて独り咳き入つてゐるときは、ひし/\と老境をさまようてゐる自分[#「老境をさまようてゐる自分」に傍点]を見出すのである。
洟水も出る、これも老を告げるものだ[#「老を告げるものだ」に傍点]。
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自己即自然[#「自己即自然」に傍点]。
自然発見即自己発見[#「自然発見即自己発見」に傍点]。
自己の生命、自然の生命。
いのち[#「いのち」に傍点]、いのちのしらべ[#「いのちのしらべ」に傍点]。
自然律。
[#ここで字下げ終わり]

 十一月三日[#「十一月三日」に二重傍線] 晴――曇。

明治節[#「明治節」に傍点]、菊花節[#
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