し、めでたし、めでたし。
Iさんの蚊帳で寝る。
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風狂、風流、風雅。
[#ここで字下げ終わり]

 八月九日[#「八月九日」に二重傍線] 雨――曇。

降つた降つた、めづらしいどしやぶりだつた、その中を戻つた、はだしで、濡れるなら濡れて。
内外整理。
Kから送金、心臓がハツとした、おのづから眼が熱くなつた、感謝と懺[#「懺」に「マヽ」の注記]愧とに堪へなかつた。
山口へ行つて買物色々、湯田へまはつて入浴、そして快い酔を持つて帰つた。
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捨身没我の風光。
幸不幸は主観の産物。
[#ここで字下げ終わり]

 八月十日[#「八月十日」に二重傍線] 曇。

夕立のこゝろよさ。
ぐつすり寝る。

 八月十一日[#「八月十一日」に二重傍線] 曇、晴、また降りさうな。

米、酒、石油、木炭、醤油、煙草、――Kのおかげで庵中物資豊富である。――
わるい親父によい息子!
歯がぬけた、痛みもとれた。
うれしい晩酌でありました。

 八月十二日[#「八月十二日」に二重傍線] 晴。

朝月のよさ。
虫干、何もかも一切の虫干。
今日も夕立、夏から秋へのうつりかはり。

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