放下[#「身心放下」に傍点]ならよいが、身心蹂躙[#「身心蹂躙」に傍点]だからよろしくない。

 八月六日[#「八月六日」に二重傍線] 雨。

一切空、放心無※[#「罘」の「不」に代えて「圭」、第4水準2−84−77]礙の境地。
すべてそらごとひがごとの世の中、友情のみはまことしんじつなり。
酒をのぞいて私の肉体が存在しないやうに、矛盾[#「矛盾」に白三角傍点]を外にしては表現されない私の心であつた、ああ。
乱酔、自己忘失、路傍に倒れてゐる私を深夜の夕立がたゝきつぶした、私は一切を無くした、色即是空だつた。……
転身一路、たしかに私の身心は一部脱落した、へうへうたり山頭火[#「へうへうたり山頭火」に傍点]! ゆうゆうたり山頭火[#「ゆうゆうたり山頭火」に傍点]! 湛へたる水のしづかさだ!

 八月七日[#「八月七日」に二重傍線] 曇――雨。

おちついて澄む、身心かろくさわやか。

 八月八日[#「八月八日」に二重傍線] 晴れたり曇つたり、気まぐれ日和。

洗濯、何もかも洗へ。
Iさんの宅で樹明君もいつしよになつて飲む、今夜も歩きまはつたけれど、ほろ/\とろ/\気分で愉快だつた、めでた
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