いしい、漬けて一等だ。
みそさざいもなつかしい、おまへもまた寂しい鳥だ。
目白はおほぜいでやつてくる、貴族的だ。
午後、ぶら/\歩きたくなつて山口へ、一片の雲影もない秋日和である。
一人はよろしいなと思ふ、そしてまた、一人はさびしいなと思ふ、人間は我儘な動物だなと思ふ。
湯田温泉に浸る、……それから……それから……バカ、バカ、……バカ、バカ……Sさんには申訳がない、Yさんにも恥づかしい、……とうたう湯田の安宿に泊つた。
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「旅草紙」
過去清算。
身心整理[#「身心整理」に傍点]。
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 十月廿九日[#「十月廿九日」に二重傍線] 晴。

空は明るく私は暗い、私は爛れてゐる!
一浴二浴して身心を洗ふ。
朝のバスにて帰庵、直ぐ臥床。
夜、嘉川のI老人来庵、たゞしやべつた、心中の苦しまぎれに。――
私が変人なら彼も変人だらう。
当地方の変人物語を聞く。

 十月三十日[#「十月三十日」に二重傍線] 晴。

身心やゝかろし。
節酒か禁酒か、死か狂か。
百舌鳥が刺すやうに啼く、私の愚劣を叱※[#「口+它」、第3水準1−14−88]するやうに。
長大息す
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