事もその一つ。
街へちよいと、油買ひに、米買ひに、なくてはすまない二つの物。
夜、Nさん来庵、いつものやうに、金がない、金がほしい話!
良い月夜だつた、十三夜ぐらゐだらう。
咳き入つて困つた、ち[#「ち」に「マヽ」の注記]ゞむさいこと。
十月廿八日[#「十月廿八日」に二重傍線] まことに日本の秋晴[#「日本の秋晴」に傍点]。
いよ/\寒くなつた、シヤツがほしくタビがほしくなつた、いそいで冬の仕度をしなければならなくなつた。
ひよどり[#「ひよどり」に傍点]が出て来て啼く、好きな鳥[#「好きな鳥」に傍点]だ。
紫蘇の実[#「紫蘇の実」に傍点]を採る、いゝにほひだ、日本的香気[#「日本的香気」に傍点]といふべきだらう。
大根を間引いてコヤシをやる、大根こそは日本蔬菜の第一位である。
――ああ、君、君、申訳がない、申訳がない、すみません、すみません、――遠方の友に向つて、私は平身低頭した、――彼は誰、何処にゐる。――
此頃の農家は忙しいが、寸閑をぬすんで、老人も子供もうち連れて柿をもいだり茸をさがしたりする、まことに美しい田園風景だ。
稲扱の音響も美しい調べといふべきだらう。
白菜がお
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