る、樹明君が来る、敬君が来る、いつしよに或るフアンを連れて、そして中村君も魚を持つて来る。……
苦しかつた、のたうちまはつた、酒は悪魔だ、何と可愛い悪魔だらう!
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自然観照――自己観照――自然観照。
自己表現――自然表現。
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十月廿五日[#「十月廿五日」に二重傍線] 晴、行楽日和だ。
迎へ酒のにがさよ(朝酒そのものはうまいのだが)。
農業校の運動会見物、樹明君はもう酔うてゐる、いや、昨夜からの延長らしい、お辨当を貰ふ、特別にナイシヨウで酒を貰ふ。……
私はスポーツに興味を持たない、引留められるのをふりきつて(Y屋で五十銭借りて)、宮市へ行く、花御子の行列[#「花御子の行列」に傍点]をちよつと見物した、そしてI家で御馳走になつた、昔話がはづんだ、S子の親切がうれしかつた。……
十時の汽車で帰庵、月はよかつたが、気持もおちついてはゐたけれど、やつぱりさびしかつた。
留守中、樹明君やら敬治君やらやつて来て待ちあぐんだらしい、すまなかつた。
労れてよくねむれたが、夢はヘンテコなものだつた。
十月廿六日[#「十月廿六日」に二重傍線] 曇。
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