「よき睡眠」に傍点]とがあつた。
方便として、禁酒節酒の仮面[#「禁酒節酒の仮面」に傍点]を被らうかとも思ふ、私は勿論、酒からは離れ得ないが、人から離れたいのである、人間(私のやうな人間でも)全然は孤独ではあり得ないけれど、孤独でありたいと願ひ、また、孤独であることの出来る時機がある、私は今、さういふ時機に直面してゐるやうである、……なほよく考ふべし。
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省みて疚しくない生活
恥ぢない生活
かげひなたのない生活
雲のやうな、風のやうな
水のやうな生活
何物をも恐れない
誰をも憚らない生活
すなほにつつましく
あたたかい、やさしい生活
[#ここで字下げ終わり]

 十月廿四日[#「十月廿四日」に二重傍線] 晴、申分のない晴。

寒い、水がつめたい、火がなつかしくなつた。
酒[#「酒」に白三角傍点]もよい、煙草[#「煙草」に白三角傍点]もよいが、本[#「本」に白三角傍点]もよいな。
Kから来信、ありがたう/\/\。
午後、街へ出かけて、払へるだけ払ふ、飲めるだけ飲む、歩けるだけ歩く、……半日半夜彷徨、どろ/\になつて戻つたが、留守中たいへんだつたらしい。――
黎君が来
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