きられるだけは生きよう」に傍点]。――
[#ここから1字下げ]
火!
毎朝、起きるとすぐ竈の下を焚きつける、ちろちろと燃える、燃えあがる。
うつくしい、ありがたい。
火の尊厳美[#「火の尊厳美」に傍点]をたたふ。
天地悠久を感じる。
自然の恩寵を感じる。
万物の流転を感じる。
感じることは事実だ[#「感じることは事実だ」に傍点]。
見るよりも聞くよりもたしかな事実だ。
触れること[#「触れること」に傍点]がたしかな事実であるやうに。
今日の幸福[#「今日の幸福」に傍点]。
今日の感謝。
[#ここで字下げ終わり]
十月十四日[#「十月十四日」に二重傍線] 快晴。
申分のない秋日和、松茸が食べたい。
私が昨年来特に動揺してゐたのは、老年期に入る動揺[#「老年期に入る動揺」に傍点]のためであつたと思ふ、不安、焦燥、無恥、自暴自棄、虚無、――すべてがその動揺から迸つたのだらう、そしてそれに酒が拍車をかけた、私の激しい性情が色彩を濃くした、……しかしそれも過ぎてしまつた、私は今、嵐の跡[#「嵐の跡」に傍点]に立つてゐる。
たより/\いろ/\、緑平老は十八日に来庵してくれるといふ、待つ
前へ
次へ
全138ページ中66ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング