てゐる、俊和尚は熊本から熊本の悪夢を思ひださせるやうに書いてよこす、困るね、リンゴは有一君の人間のよさをそのまゝ現はしてゐる。
しづかにしてなつかしく、といつたやうな気分だ、だが、私にも私としてのなやみがありなげきがある、それがだん/\「もののあはれ」といつたやうな情緒になりつつあるが。
私は俳句に対して monomania だ、それでよろしい。
Sweet solitude ! それがなくてはかういふ生活はつづけられない。
無理のない、こだはりのない、ゆつたりとしてすなほな身心が望ましい、欲しい。
米がなくなつた(銭はもとよりない)、ハガキが百枚ばかりある、それで何とかならう。
夕方やりきれなくなり、街へ出かけてハガキを酒に代へる、ハガキ酒はよかつたね、ほどよく酔うた、さるにても酒飲根性のいやしさよ。
学校の給仕さんが呼びに来た、樹明君宿直といふ、さつそくまた出かける、御馳走になつてそのまま泊る、少々飲みすぎて少々あぶなく少々寝苦しかつた。
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□自分の本分[#「自分の本分」に傍点]を知れ。
自分の塔[#「自分の塔」に傍点]を築きあげよ。
□
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