の注記]の主人Jさん、つゞいて酒屋の主人Mさんがやつてきて四方山話。
今日でサケナシデーが三日つゞく、飲みたいのをぐつと抑へて、――つらいね!
今日はじめて熟柿を食べる(歯のない私は熟柿しか食べられない)、何といふ甘さ、それは太陽そのものの味であらう。
今夜も寝苦しかつた。……
    (昭和十一年十月十二日午前十時記す)
――所詮、私は私の道[#「私の道」に傍点]に精進するより外はないのである、たとへ、その道は常道でなくとも、また、難道であつても、何であつても、私は私の道を行かざるを得ないのである。
句作道[#「句作道」に傍点]、――この道は私の行くべき、行き得る、行かないではゐられない、唯一無二の道[#「唯一無二の道」に傍点]である。
それは険しい道だ、或は寂しい道だ、だが、私は敢然として悠然として、その道に精進する。
句作が私の一切となつた[#「句作が私の一切となつた」に傍点]、私は一切を句作にぶちこむ[#「私は一切を句作にぶちこむ」に傍点]。
私は我儘である、私は幸福である、私は貧乏である、私は自由である、私は孤独である、私は純真である。
私は飛躍[#「飛躍」に傍点]した、溝を
前へ 次へ
全138ページ中62ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング