さうな朝日がこゝまで
・はたしてうれしいことがあつたよこうろぎよ
・飛行機はるかに通りすぎるこほろぎ
・つめたくあはただしくてふてふ
・ひつそりとおだやかな味噌汁煮える
・百舌鳥もこほろぎも今日の幸福
・水をわたる誰にともなくさようなら
・月の澄みやうは熟柿落ちようとして
・酔ひざめの風のかなしく吹きぬける(改作)
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十月十日[#「十月十日」に二重傍線] 晴――曇。
けさも朝月がよかつた。
小猫でも飼はうかなどゝ思ふ(犬も悪くないけれど私にはとても養ひきれない)、こんなことを考へるのは年齢のせいか、秋だからか、とにかくペツトが欲しいな。
平静、しづかに読み、しづかに考へる、時々オイボレセンチを持て余す、どう扱つたらよからうか。
松茸で一杯二杯三杯やりたいなあ、あの香、あの舌触、ああやりきれない!
こんな句を見つけた――
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老いぬれば日の永いにも涙かな 一茶
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さつそく、附きすぎる句を附ける――
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夜ルも長くてまた涙する 山頭火
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同老相憐むとでもいはう。
たより
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