生を味解させる[#「苦痛は人生を味解させる」に傍点])。
今日も雨、しめやかな日。
今日の買物は、米三升九十九銭、鯖一尾十六銭。
澄太君が近著地下の水[#「地下の水」に傍点]を送つてくれた、読んで何よりも羨ましいと思つたのは君のおちつき[#「おちつき」に傍点]だ、そして孝行[#「孝行」に傍点]だ、地下の水一冊は澄太其人の面貌だ、君に対する尊敬と親愛とをより深くした。
午後、Jさん来庵、さいはひ、紫蘇巻と酒とがあるから一杯さしあげる。
近来めづらしい、ありがたい晩飯を食べた。
こゝろしづかにしてしづみゆく[#「こゝろしづかにしてしづみゆく」に傍点]、せんすべなし。
すゞしくぐつすりねむる。
[#ここから1字下げ]
世の中にタダほど安いものはないといふが、或る場合にはタダほど高いものはないこともある。
私には、私のやうなものには、さういふ或る場合[#「或る場合」に傍点]が稀でない。
[#ここで字下げ終わり]
八月三日[#「八月三日」に二重傍線] 曇、後雨。
せつかくの月も管絃祭も駄目であつた。
障子の目張半日。
まるで梅雨のやうな土用だ。
俊和尚からうれしい手紙。
やつと月があらはれ
前へ
次へ
全138ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング