に私を憂欝にした(一昨日の結婚挨拶状と同様に)、親として父として人間として、私は屑の屑、下々の下だ!
昨日も今日も酒があり肴がある。
月のよろしさ。
いつまでも睡れなかつた。
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芭蕉……感傷
富士川の渡。
市振の宿。
蕪村……貧乏
悪妻。
一茶……執着
大福帳。
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九月三十日[#「九月三十日」に二重傍線] 晴――曇。
仲秋無月。
肌寒く百舌鳥鋭し。
沈静、読書、観賞[#「賞」に「マヽ」の注記]。――
昼食前に樹明君が来て、山口へ出張するから同伴しようといふ、一も二もなく出かける。
湯田温泉はいつでもうれしい、あてもなく歩きまはつて句を拾ふ。
そしていつしよに帰るべくバスに乗つたが、私だけはいつもの癖でどろ/\どろ/\。……
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Kへの手紙
(父と子との間)
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十月一日[#「十月一日」に二重傍線] 曇。
今夜も無月か、惜しいなあ。
夜明け近くなつて帰つて来た。……
樹明君神妙に早起して出勤、昨夜の君はいつもと違つてよかつた。……
身心すぐれず、宿酔の気味、罰だ。……
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