い、瘤になつては困る、癌にはなれまい。
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九月廿五日[#「九月廿五日」に二重傍線] 晴――曇。
身心だいぶ落ちつく。
わがこゝろ水の如かれ、わがこゝろ空の如かれ。
午前、大毎のMさんが写真師を連れて来訪、私と庵とを写した、私といふ人間はつまらないが、萩にすすきの草屋はつまらなくはない。
庵中独坐。
曼珠沙華の花さかり、とても美しいが、その妖艶は強すぎる。
悔恨、更生、精進。……
さびしけりやうたへ[#「さびしけりやうたへ」に傍点]。
夜更けて、樹明君が酔つぱらつて転げこんだ、そして寝てしまつた、酔態あさましいものであつたが、人事ぢやない、それはまた私の姿でもあるのだ。
頭部に腫物が出来て気分がすぐれない、しかし軽い疾病は現在の私にはむしろうれしいものだ。
落ちついて睡れなかつた。
夜明けの雨となつた。
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生死も真実、煩悩も真実、苦難も真実、弱さも醜さも愚かさも真実だ。
生々死々、去々来々。
矛盾そのままの調和[#「矛盾そのままの調和」に傍点]、それが本当である、人生も自然のやうに。
観照自得の境地。
割り切れない、割り切らうとあせらな
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