をしかれたのかもわからない。
今後は誓つて、よい酒、うまい酒[#「うまい酒」に傍点]、恥づかしくない酒、悔ゐない酒[#「悔ゐない酒」に傍点]、――澄んでおちついた酒を飲まう、飲まなければならない。
肉体――顔は正直だ、昨日今日の私の顔は私の心そのままだ、何といふ険悪、自分ながら見るに忍びなかつた。
酒屋の小僧さんが、私の生活を心配してくれる、心配しなくつたつてよいよ、どうにかかうにか食つてはゆけます!
寒山詩[#「寒山詩」に傍点]を読む、我心似秋月[#「我心似秋月」に傍点]。……
散歩して少し労れたところで晩酌をやつたので、だいぶ身心くつろいでゐるところへ、Kさん来訪、つゞいてNさん来訪、四方山話でのんびりした。
別れてから、Nさんがしんせつにも持つてきて貸して下さつた婦人公論[#「婦人公論」に傍点]を読み散らして夜を更かした。

 九月廿三日[#「九月廿三日」に二重傍線] 晴、彼岸中日。

日本晴、ピクニツク日和、まさに人生行楽の秋。
朝霧のすが/\しさ、朝の水を汲みあげると清新そのものだ。
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来るか来るかと燗して待てば
あなた来ないで酒は無くなる
待つても待つ
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