ゐるうちにだん/\雲が切れて日ざしが洩れてきた、私にはお祭も(盆も正月も)ないけれど。
秋風さらさらさら。
待つ、待つ、待つ、――来ない、来ない、来ない。
うたゝ寝していやな夢を見た、覚めてもしばらくはその情景から離れることが出来なかつた。
夢は正直だ[#「夢は正直だ」に傍点]、意識しない自分[#「意識しない自分」に傍点]をさらけだして見せてくれる、再思三省。
今夜は蚊帳を吊らなかつた、胸が切なく寝苦しい一夜だつた。
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△銭なしデー
   いつもさうだ。
△酒なしデー
   しば/\ある。
△飯なしデー
   とき/″\。
 そして最後に
△命なしデー
   さよなら!
[#ここで字下げ終わり]

 九月十七日[#「九月十七日」に二重傍線] 秋晴。

身心すが/\しい、澄んだ自分[#「澄んだ自分」に傍点]が出現する。
身辺整理。
今日も来ない、今日も。――
空腹しみ/″\読書。
ひよろ/\(何しろ昨日の朝食べたきりだから)散歩する、ついでに学校に寄つて新聞を読んでゐたら、ひよつこり樹明君(何といふ幸福、実は遠慮して逢はないでゐたのだ!)、遠慮しないで米を貰ふ、酒と
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