訪、お互に無一文だからしばらく無駄話をして、さよならさよなら。
柿の葉の落ちるのが目につくやうになつた。
青柚子一つ、秋が匂ふ。
あまつた御飯をおむすびにして焼いてをく、明日の糧です、一つ二つ三つ、四つあります。
つつましく、あまりにつつましく。
季節のうつりかはり[#「季節のうつりかはり」に傍点]が身にしみる。
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   固形アルコールについて
味ふ酒[#「味ふ酒」に傍点]は液体でないと困る。
酔ふ酒[#「酔ふ酒」に傍点]は固形が便利だ。
丸薬のやうに一粒二粒といつたやうな。
酒量に応じて、その場合を考へて、一粒とか十粒とかを服用する。
一粒ほろ/\十粒どろ/\なぞは至極面白からう。
酔丹[#「酔丹」に傍点]といふ名はいかが! 或は安楽丸[#「安楽丸」に傍点]。
      ×
私は極楽蜻蛉[#「極楽蜻蛉」に傍点]だ。
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 九月十六日[#「九月十六日」に二重傍線] 雨、晴れる、曇る。

秋雨、しよう/\とふる、単衣一枚では肌寒く、手水も冷たく感じられる、火鉢がなつかしくなつておのづから手をかざすほど。
せつかくのお祭が雨で気の毒なと思つて
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