のサイレンが鳴つてから、樹明君来庵、久しぶりである(二週間近く逢はなかつた)、飲む、食べる、しやべる、それから散歩、そして例によつて例の如し!
畜舎に泊つた(蝮の暗示があつたので)、アルコール臭くて困つたとIさんが笑ひながら言つた(朝のこと)。
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虫の宿。
小鳥の遊び場。
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 九月五日[#「九月五日」に二重傍線] 晴。

さうらうとしてかへる。……
樹明君よ、お互につつしみませう!
ぼう/\ばく/\として今日一日は閉居した。
残暑がなか/\きびしい、朝から裸だつた、はだか、はだか、はだかなるかなである。
鈴虫が数日前から前栽でチンチロリン、チンチロリン、まだまづいな。
どこからか鼠がやつてきて、そこらをかぢる、がり/\、がり/\、彼はかぢることそのこと[#「かぢることそのこと」に傍点]がおもしろいらしい。
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   白い花(第五句集)
私が求めつつある花は青い花でなく赤い花でもなくて白い花である。
私が見出してゐる花は灰色の花である。
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 九月六日[#「九月六日」に二重傍線] 秋晴らしく。


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