た。
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□九官鳥[#「九官鳥」に傍点]になれ、くつわ虫になれ。
 そこに安住せよ。
□自己を磨く、芸を磨く。
 私の場合では、酒を味ひつつ句を作る[#「酒を味ひつつ句を作る」に傍点]ことである。
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 九月三日[#「九月三日」に二重傍線] 晴――曇。

昇る陽をまともに、寝たり起きたり。
やつと短冊を書きあげた、三十枚、一枚も書き損じなく、すぐ送る、ほつとした。
郵便局まで出かけたついでに、シヨウチユウ一杯、ほろ/\になつて帰る、途中少々あぶなかつた!
おとなしく、また一日一夜が過ぎた。

 九月四日[#「九月四日」に二重傍線] 晴。

あまりに早起だつた、なか/\夜が明けなかつた、年をとると、先がないので、ゆつくり睡れません!
いつからともなく空の虫が地の虫[#「空の虫が地の虫」に傍点]になつた、いひかへると、蝉や蜻蛉が少くなつて、こほろぎなどが鳴きしきるのである、こほろぎは最も大衆的歌手だ。
きたない、きたない、何もかもきたない、私自身の身心がことにきたない。
味気ないな、――何に対しても興味がない――、生活意力がなくなつたのだ。
六時
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