ことをも遠慮して、毎日毎日咲くのを眺めてゐたのに、……これが有難迷惑といふのだらうか、刈りとられた萩の枝を見ては微苦笑するより外なかつた。
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八月廿七日[#「八月廿七日」に二重傍線] 曇。
夢の中で執着深い自分[#「執着深い自分」に傍点]を見出した。
山から木や草を戴いて活ける。
飲むか読むか、或は歩くか寝るか。……
idle dreamer は一匹の蝿にもみだされる。
厄日近い天候、雲の色も風の音も何となく穏かでないものがあつた。
早寝、ランプもともさないで、とりとめもない事を考へつゞけてゐると、Nさんが来訪された、しばらく漫談。
くつわ虫が水の流れるやうに鳴く、すぐそこまで来て鳴く、座敷の中へとびこんで鳴く。……
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或る自殺[#「或る自殺」に白三角傍点](連作)
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八月廿八日[#「八月廿八日」に二重傍線] 晴、とかく曇りがち。
露草のうつくしさを机上にうつす、何と可憐な花だらう。
うらさびしさ、ものかなしさ、そして退屈!
つれ/″\なるまゝに徒然草を読む。
早く夕飯を食べて、新開作のNさんを訪ねるつも
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