ヽ」の注記]酒が愉快だつたし、ぐつすりと安眠したので、今日は身心明朗だ。
此頃よくKやKの婚礼の夢を見る、親心とでもいふのであらうか、――肉縁断ち難し、断ち難きが故に断たざるべからず、――ああ。
身辺整理、やつと片付いた。
午後、樹明君来庵、誘はれて椹野川へ出かける、魚は捕らないで飲み歩いた、そしてどろ/\ぼろ/\になつてしまつた、……それでも理髪して、道具は持つて帰つて寝床にはいつてゐたから妙だ!
[#ここから1字下げ]
温泉といふものは有難いものである、私は入浴好きだが、温泉にはいると、身心が一新されたやうに感じる。
湯田温泉を近くに持つてゐる私は幸福である。
バス代が往復で十四銭(上郷まで歩いて、回数券で)、湯銭が二回で五銭(割引券を買へば)。
何と安価な極楽浄土だらう。
[#ここで字下げ終わり]

 八月二十四日[#「八月二十四日」に二重傍線] 曇。

天も曇れば私も曇る。……
当分また禁酒の事、……駄目々々。
空が晴れた、私も晴れた、……風が涼しく、身も心も涼しく。……
たよりいろ/\ありがたし。
山口へ行く、鈴木さんを訪ねて御馳走になる、おいしかつた、小郡まで戻つて、友沢さ
前へ 次へ
全138ページ中18ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング