[#「昨夜の今朝の私」に傍点]だ、何となく身心がだるい。
迎酒! 牛肉もまだ残つてゐる。
ゲジゲジを見つけたのでたたき殺した、殺してから気持が悪かつた、無益の殺生とは思はないけれど、人間のエゴであることには間違ひない。
今日も古悪友樹明君[#「古悪友樹明君」に傍点]、新悪友K君[#「新悪友K君」に傍点]がやつて来て、あつさり飲んだ、ヨタ話がはづんだ。
あな、おもしろの浮世かな。
宵寝の朝寝だつた。

 八月二十日[#「八月二十日」に二重傍線] 晴、午後曇る。

何やかや用事が出てきて、なか/\忙しい。
駅のポストまで。
トマトがとても食べきれない(私があまり食べないからでもあるが)、郵便さ[#「便さ」に「マヽ」の注記]んにでも食べてもらはう。
すなほにつつましく[#「すなほにつつましく」に傍点]、今日も生きる[#「今日も生きる」に傍点]、うれしい。
待つ人来らず、待つ物受け取れない、さびしい。
午後、河尻へ出かけて蜆貝を掘る、食べるだけはすぐ与へられた、ありがたい。
刈萱を摘んで戻つた、これも私の好きな草である、まだ穂が出てゐないから、刈萱の風情は十分に味へないが。
蜆貝汁をこしらへつ
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