心境である。
三寒四温[#「三寒四温」に傍点]といふ、その一温といふお天気である。
街のポストまで出かけて、ついでに豆腐を買うてくる。
餅粥[#「餅粥」に傍点]はうまいな。
……Dさんはとう/\来なかつた、SさんもKさんも来なかつた、……私は待つてはゐたけれどアテにはしてゐない[#「私は待つてはゐたけれどアテにはしてゐない」に傍点](アテにしてゐるとアテがはづれたとき腹が立つ)。
来者不拒、去者不追、私は私一人で足るだけの生活情調[#「生活情調」に傍点]を持つてゐる。
今夜もようねむれるこころよさ。
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・明けてくる物みな澄んで時計ちくたく
・はなれたかげはをとことをなごの寒い月あかり
・けさの雪へ最初の足あとつけて郵便やさん
・とぼ/\もどる凩のみちがまつすぐ
ここに家してお正月の南天あかし
たまたま落葉ふむ音がすれば鮮人の屑買ひ
緑平老の愛犬ネロが行方不明となつたと知らされて二句
・冬空のどちらへいつてしまつたか
・犬も[#「犬も」に「ネロも」の注記]ゐなくなつた夫婦ぎりの冬夜のラヂオ
[#ここで字下げ終わり]
一月廿一日[#「一月廿一日」に二重傍
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