」に傍点]があるのである。
□買ひかぶられるきまりのわるさよりも、見下げられる安らかさ。
※[#二重四角、265−5]将棋の名手は含み[#「含み」に傍点]といふことをいふ、一手は百手二百手を含んでゐるのである、また、千石二千石の水からしたゝる一滴[#「一滴」に傍点]は力強いものを持つてゐる、そのやうに一句は全生活全人格からにじみでたもの[#「一句は全生活全人格からにじみでたもの」に傍点]でなければならない。
※[#二重四角、265−8]私の一句一句は私の一歩一歩である、一句は一歩踏みゆく表現である。
[#ここで字下げ終わり]

 一月十八日[#「一月十八日」に二重傍線] 晴、ちらほら小雪がふつて冷たい。

あれば食べすぎる下司根性[#「下司根性」に傍点]が恥づかしい! どうやら餅を食べすぎたらしいので今日はパン。
呪はれた枇杷の木、それがいつのまにやら枯れた! さびしい。
夜を徹して句作推敲……。
明日は入営の別宴の唄声がおそくまできこえた。
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・雪もよひ雪となつた変電所の直角形(改作)
・おもひでがそれからそれへ晩酌一本
・雪あかりのしづけさの誰もこないでよろし
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