は流れ渡りだ。
花見辨当をたべてゐるうちに、ほろりと歯がぬけた、ぬけさうな歯であり、ぬければよいと考へてゐた歯であつた、何だかさつぱりした。
ぬけさうでぬけなかつた歯がぬけた、これだけでも解脱の気分[#「解脱の気分」に傍点]を味ふことが出来た。
自己検討[#「自己検討」に傍点]、愚劣を発見するばかりであるが、その愚劣が近来やゝ自在[#「自在」に傍点]になつたことはうれしいと思ふ。
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ぐうたら手記
□私はうたふ、自然を通して私を[#「自然を通して私を」に傍点]うたふ。
□私の句は私の微笑[#「微笑」に傍点]である、時として苦笑めいたものがないでもあるまいが。
□くりかえしていふ、私の行く道は『此一筋』の外にはないのである。
□俳句性を一言でつくせば、ぐつと掴んでぱつと放つ[#「ぐつと掴んでぱつと放つ」に傍点]、といふところにあると思ふ。
□私の傾能[#「能」に「マヽ」の注記]は老境に入るにしたがつて、色の世界[#「色の世界」に傍点]から音の世界[#「音の世界」に傍点]――声の世界[#「声の世界」に傍点]へはいつてゆく。
□俳句のリズムは、は
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