時として涙がでても汗がながれても。
噛みしめて味ふ、こだはりなく遊ぶ。
ゆたかに、のびやかに、すなほに。
さびしけれどもあたたかに。――(序に代へて)
[#ここで字下げ終わり]
四月一日[#「四月一日」に二重傍線] 晴、April fool といはれる日。
人生といふものは、結果から観ると、April fool みたいなことが多からう。
友情に甘えるな[#「友情に甘えるな」に傍点]、自分を甘やかすな[#「自分を甘やかすな」に傍点]。
天地明朗、身心清澄。
午後、近郊を散歩する、出かけるとき何の気もなくステツキ、いやステツキといつてはいけない、杖をついたのである、山頭火も老いたるかなと思へば微苦笑物だ。
まだ風は寒いので、四時間ばかり山から野をぶらついて、途中、一杯ひつかけて戻つた。
旧街道の松並木が伐り倒されてゐる、往来の邪魔になるからだらうけれど、いたましく感じた。
酒はどうしてもやめられないから飲む、飲めば飲みすぎる、そして酒乱[#「酒乱」に傍点]になる、だらしなくなる、一種のマニヤだ、つつしまなければならないなどと考へてゐるうちに、ぐつすりとねむつた。
四月二日[#「四
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