り]
とう/\徹夜してしまつた。
年をとるほど、生きてゐることのむつかしさを感じる、本来の面目に徹しえないからである。
親しい友に――
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……私はとかく物事にこだはりすぎて困ります、そしてクヨ/\したり、ケチ/\したりしてゐます、私のやうなものは生きてゐるかぎり、この苦悩から脱しきれないでせうが、とにかく全心全身を句作にぶちこまなければなりません。……
・なんとけさの鶯のへたくそうた
・あるだけの酒をたべ風を聴き
・悔いることばかりひよどりはないてくれても
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――(このみち)――
このみちをゆく――このみちをゆくよりほかない私である。
それは苦しい、そして楽しい道である、はるかな、そしてたしかな、細い険しい道である。
白道である、それは凄い道である、冷たい道ではない。
私はうたふ、私をうたふ[#「私をうたふ」に傍点]、自然をうたふ、人間をうたふ。
俳句は悲鳴ではない、むろん怒号ではない、溜息でもない、欠伸であつてはならない、むしろ深呼吸[#「深呼吸」に傍点]である。
詩はいきづき、しらべである、さけびであつてもうめきであつてはいけない、
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