伊東さんがやつてくる、国森君にでくわす、どろ/\になつて帰庵、いつしよに寝る。
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  述懐
たつた一本の歯がいたみます
[#ここで字下げ終わり]

 三月二十六日[#「三月二十六日」に二重傍線] 晴。

朝酒のよろしさ、伊東君を見送る。
暴風一過、自己清算にいそがしかつた!

 三月二十七日[#「三月二十七日」に二重傍線] 曇。

サクラがぼつ/\咲きだした。
あさましい自分、みじめな自分をさらけだした。
自分が自分を信頼することができないとは何といふ情なさだらう。
最後の自分の姿をまざ/\と見た。
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・考へることがある窓ちかくきてなくは鴉
・日向おもたくうなだれて花はちる
・うららかにして鏡の中の顔
・雨の、風の、芽をふく枝のやすけさは
[#ここで字下げ終わり]

 三月二十八日[#「三月二十八日」に二重傍線] 花時風雨多し。

こん/\としてねむつた。

 三月二十九日[#「三月二十九日」に二重傍線] 晴。

前後際断。
恥知らずの自分が恥づかしい。
緑平句集、松の木[#「松の木」に傍点]は尊い。
村上名物、堆朱の香入は有難い。
[#
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