るさと
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 三月二十四日[#「三月二十四日」に二重傍線] 雨、だん/\晴れてきた。

私は友情で生きてゐる、いや友情で生かされてゐる。
私は私を祝福する、祝福せずにはゐられない。
樹明来庵、酒余の痴呆状態で! そして酒よりも飯が欲しいといふ。
樹明君を送つて別れてから、一人で飲む、ほろ/\とろ/\酔ふ、そしていつもの宿に泊つた、ぐつすり眠れた。
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・あなたとフリイヂヤとそしてわたくしと(或る女友に)
・さえづりつつのぼりつつ雲雀の青空
 朝月が、いちはやくひよ鳥が
・酔へばさみしがる木の芽草の芽
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 三月二十五日[#「三月二十五日」に二重傍線] 日本晴。

日本の春だ[#「日本の春だ」に傍点]、日本人の歓喜だ。
過去をして過去を葬らしめよ、昨日は昨日、明日は明日、今日は今日の生命を呼吸せよ[#「今日の生命を呼吸せよ」に傍点]。
小鳥のやうに[#「小鳥のやうに」に傍点]、あゝ小鳥のやうにうたへ、そしてをどれ。
もう蟻が出て来て歩いてゐる。
ありがたい手紙、ほんたうにありがたい手紙。
街を歩く、酒がある、女がゐる。…
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