りなく私も生きてゐる
・しぐるゝや耕すやだまつて一人
   周二君を小郡駅に見送るプラットホームにて
 窓が人がみんなうごいてさようなら
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 一月十三日[#「一月十三日」に二重傍線] 晴れて風吹く。

冷たくて「寒」らしい、冬は寒いのがほんたうだ。
酒と豆腐[#「酒と豆腐」に傍点]とがあつて幸福である。
樹明君来庵。
いつしよに出かけてSさんを訪ねる、御馳走になる、それから三人連れで歩く、コーヒー、ビフテキ、コリントゲーム、等、等、等。
ほどよく別れて帰庵。
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・家があれば菰あむ音のあたゝかな日ざし
・雑草ぽか/\せなかの太陽
・日向ぬく/\と鶏をむしつてゐる
 夕日のお地蔵さまの目鼻はつきり
 水に夕日のゆらめくかげは
[#ここで字下げ終わり]

 一月十四日[#「一月十四日」に二重傍線] 晴――曇――雨。

うれしいたより、これあるがゆえに私も生きてゆける。
昨夜の食べすぎ飲みすぎで今日一日苦しんだ、やつぱりつゝしむべきは口である。
つゝましく生活せよ、私の幸福はそこにある。

 一月十五日[#「一月十五日」に二重傍線] 雨、曇。


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