トラツクのがたびしも春けしきめいて
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 三月十二日[#「三月十二日」に二重傍線]

正々堂々として朝がへり。
トンビを曲げて酔ふ、身心洞然としてさえぎるものなし。
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・風の枯葦のおちつかうともしない
 晴れて風ふく草に火をはなつ
 つつましく住めば小鳥のきてあそぶ
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 三月十三日[#「三月十三日」に二重傍線] 晴。

もう油虫めが出てきやがつた。
澄太君から来信、その友情は私を感泣さした。
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・山から水が流れてきて春の音
・住みなれて家をめぐりてなづな咲く
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 三月十四日[#「三月十四日」に二重傍線] 晴、霜、氷。

樹明君と関門日々新聞記者波多野君と同行して来庵、飲んで、出かけてまた飲んだ、そして酔うて、嫌な事件があつた。

 三月十五日[#「三月十五日」に二重傍線]

うれしい藪鶯が鳴く。
後藤さんが帰郷の途次を寄つてくれた、澄太君の奥さんの心づくし――饅頭を持つて。
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・みんないつしよに湧いてあふれる湯のあつさ(千人湯)
・風も春めい
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