、いや期待して飲んではいけない。
酔ふための酒[#「酔ふための酒」に傍点]はいけない、味ふ酒[#「味ふ酒」に傍点]でなければならない。
酔ひたい酒でなくて、味ふほどに酔ふ酒[#「味ふほどに酔ふ酒」に傍点]でなければならない。
酒のうまさ[#「酒のうまさ」に傍点]、水のうまさ[#「水のうまさ」に傍点]、それが人生のうまさ[#「人生のうまさ」に傍点]でもある。
しづかに炭をおこして(炭があるのはうれしいな)しづかに茶をすゝる、――人間として生きてゐる幸福[#「人間として生きてゐる幸福」に傍点]。
水、米、酒、豆腐、俳句――よくぞ日本に生れたる[#「よくぞ日本に生れたる」に傍点]! 日本人としてのよろこび。
地獄に遊ぶ[#「地獄に遊ぶ」に傍点]、かういふ生き方は尊い。
山口へ出張して、帰途また立寄るといつて別れた敬坊を待つたが、なか/\やつて来ない、樹明君から手紙がくる、宿直だからやつて来なさいといふ、夕方から出かける、例の如く飲む食べる、話す笑ふ、そして泊る、……今夜はみんな酔ひすぎて(五人共)あぶなく脱線するところだつた。
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  試作四句
その手が、をんなになつてゐ
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