ある、右も左も甘党辛党万々歳である。
苦労は人間を磨く[#「苦労は人間を磨く」に傍点]、用心すべきは悪擦れしないことである[#「用心すべきは悪擦れしないことである」に傍点]。
私の日記も書く事書きたい事がだん/\少くなつた、ここにも私の近来の生活気力があらはれてゐるといへるだらう。
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・こどもはなかよく椿の花をひらうては
・せんだんの実や春めいた雲のうごくともなく
・椿ぽとり豆腐やの笛がちかづく
・人間がなつかしい空にはよい月
 やつぱり出てゐる蕗のとうのおもひで(改作)
   井師筆額字を凝視しつつ
・「其中一人」があるくよな春がやつてきた(改作)
[#ここで字下げ終わり]

 二月二十一日[#「二月二十一日」に二重傍線]

なか/\寒い、霜がつめたい、捨てた水がすぐ凍るほどであるが、晴れてうらゝかで、春、春、春、午後は曇つて、夜はぬくたらしい雨となつた。
おいしい雑魚を焼いてゆつくり昼飯を食べてから近在を散歩する、春寒い風が胸にこたえるので、長くは歩けなかつたが、蕗のとうと句とを拾つて戻つた。
けふもまた誰も来なかつた、誰も来ないでよろしいけれども、淋しいなと
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