帰途湯田で入浴、温泉にひたつてゐる心持は徃生安楽国だ!
帰庵したのは十時だつた、労れた、々々々。
留守中に来客があつた、酒と肴を持つて来て、そして飲んでも食べても待ちきれなかつたらしい、――彼は樹明君でなければならない、――机上のノートには何のかのと書き残してあつた。
私は此頃めつきり衰弱して、半病人の生活[#「半病人の生活」に傍点]をしてゐる、そしてさういふ生活が私をしてほんたうの私[#「ほんたうの私」に傍点]たらしめてくれる!
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・かあとなけばかあとこたへて小春日のからすども
・夜あけの風のしづもればつもつてゐる雪
・見あげて飛行機のゆくへの見えなくなるまで
 たたへて凍つてゐる雲かげ
・あたたかなれば木かげ人かげ
・枯草へ煙のかげの濃くうすく
・わかいめをとでならんでできる麦ふむ仕事
・竹の葉のいちはやく音たてて霰
   改作二句
・木枯は鳴りつのる変電所の直角線
・しんみりする日の、草のかげ
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 一月廿六日[#「一月廿六日」に二重傍線] 雪もよひ、小雪ちらほら。

酒があるから酒を飲む、朝酒はうまい。
青海苔の風味[#「青海苔の風
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