涯[#「日々が悪日でない境涯」に傍点]ではあると思ふ。
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・雪のしたゝる水くんできてけふのお粥
・春の雪ふる草のいよいよしづか
・わらや雪とくる音のいちにち
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 一月廿四日[#「一月廿四日」に二重傍線] 晴、寒、曇。

三日ぶりに街へ出かけた(人と話したも三日ぶり)、そして酒と米と餅と豆腐とを買うてきた。
雪がふれば雪見酒、酒がなければ読書、炬燵と餅とはいつでもある、――これが私の冬ごもり情調だ。
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・寒[#(ン)]空のとゞろけばとほくより飛行機
・爆音、まつしぐらに凩をついて一機
・飛行機がとんできていつて冴えかへる空
・けふもよい日の、こごめ餅こんがりふくれた
   戯作一首
世の中に餅ほどうまいものはない
  すいもあまいも噛みしめる味
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 一月廿五日[#「一月廿五日」に二重傍線] 霜晴れ、のどかな日かげ。

午前、街へ出かけて、払へるだけ払ひ、買へる物だけ買ふ。
午後、また出かけて駅までゆく、いろ/\の用事を思ひだして山口へ、そして鈴木さんを訪ねる、頼む事は頼んで、御馳走を頂戴した、
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