下げ終わり]

 八月十六日[#「八月十六日」に二重傍線] 晴れて涼しい。

今日も身辺整理、手紙を書きつづける。
昨夜もまた一睡もしなかつた、少し神経衰弱になつてゐるらしい、そんな弱さではいけない。
午後、樹明君、敬治君来庵、酒と汽車辨当を買うて、三人楽しく飲んで食べて話した、夕方からいつしよに街へ出かけてシネマを観た(トーキーでないので、せつかくのヱノケンも駄目だつた)、それから少し歩いて、めでたく別れた。
十一日ぶりのアルコール、いやサケはとてもうまかつた。
私にはもう性慾[#「性慾」に傍点]はない、食慾[#「食慾」に傍点]があるだけだ、味ふことが生きることだ[#「味ふことが生きることだ」に傍点]。
[#ここから2字下げ]
・すずしく風が蜂も蝶々も通りぬける
・かたすみでうれてはおちるなつめです
・身のまはりいつからともなく枯れそめし草
 ねむれなかつた朝月があるざくろの花
 月夜干してあるものの白うゆらいで
[#ここで字下げ終わり]

 三月十七日[#「三月十七日」に二重傍線][#「三月十七日[#「三月十七日」に二重傍線]」はママ]

寝た、寝た、ぐつすりと睡れた。
樹明君に連
前へ 次へ
全186ページ中115ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング