灯。
今日観たシネマは面白かつた、サトウハチローの裏街の交響楽[#「裏街の交響楽」に傍点]には新味はないが持味があつた。
暑苦しく寝苦しかつた。
[#ここから2字下げ]
   岔水居
 したしく逢うてビール泡立つ
   或る旧友と会して
・寝顔なつかしいをさな顔がある
 朝ぐもり海へ出てゆく暑い雲
[#ここで字下げ終わり]

 八月二日[#「八月二日」に二重傍線]

朝酒はありがたい、もつたいない。
岔水君に送られて下関へ。――
私が使用する送られて[#「送られて」に傍点]といふ言葉は食事、切符、等々を与へられることをも意味してゐる、あゝもつたいない。
下関では飲み歩いた、饒舌り散らした、とう/\黎々火君の厄介になつた。
シネマは面白かつた。
小遣も興味もなくなつたので、駅の待合室で一夜を明かした。

 八月三日[#「八月三日」に二重傍線]

早朝帰庵。
愉快な旅の一週間だつた、友はなつかしい、酒はおいしい、ビールもよろしい、鮎も好き、……労れて、だらけて、こんとんとして眠つた。

 八月四日[#「八月四日」に二重傍線]

ぼう/\ばく/\。
関日の波多君が小学校の先生二人を同伴して来
前へ 次へ
全186ページ中110ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング