得の境地[#「自得の境地」に傍点]がなければならない、芸術は、殊に俳句はそこから生れる。
管絃祭第一夜、ぽん/\花火があがる。
哀しい夢だつた。……
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・しろいてふてふにいつうまれたかきいろいてふてふ
・蚊帳越しにまともに月が青葉のむかうから
・月の水鶏がせつなく啼いて遠ざかる
 郵便やさんがばさりと朝日へ投げだしてくれた
[#ここで字下げ終わり]

 七月廿八日[#「七月廿八日」に二重傍線]

快晴、涼しい快い夏の朝を味ふ。
身辺整理。
桔梗が咲く、さつそく壺に※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]す、その姿、その色、すべてがたまらなくよい、山桔梗はことに。
M君の友情を味ふうちに、欝屈したふさぎの虫が反逆して[#「ふさぎの虫が反逆して」に傍点]、どろ/\になつてしまつた、そして樹明君の友情をも攪乱してしまつた。……
夕方、さうらうとして帰庵すると、待ちに待つた中原さんが来て待ちくたぶれて帰つたといふ置手紙がある、地団太踏んでも追つつかない、悔と恥と詫とを痛感しながら、そのお土産を戴く、酒、卵、さうめん、バナナ。……
[#ここか
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