ら2字下げ]
・くらがり風鈴の鳴りしきる
・炎天の鴉の声の濁つてゐる
・月あかり白い薬を飲むほどは
・草ふかくここに住みついて涼しく
・炎天の地しばり草の咲きつづく
・おそい月が出てきりぎりす
・ねむり薬もねさしてはくれない月かげ
・夜蝉よここにもねむれないものがゐる
[#ここで字下げ終わり]

 七月廿九日[#「七月廿九日」に二重傍線]

曇、こんな中日[#「中日」に「マヽ」の注記]だつた、何といふ情ない。……
樹明君から最後通牒[#「最後通牒」に傍点]みたいな葉書がきた、どうにも仕方がないから放任する。……

 七月三十日[#「七月三十日」に二重傍線]

晴、昨日から寝つづけてゐる。
夜半、酔樹明君が来て寝る、彼も無言、私も無言、夜が明けると帰つていつた、彼も無言、私も無言、この無言はまことに千万無量のものだつた。
トマトを食べて、すこし心がなごんだ。
こん/\と睡つた。
節酒[#「節酒」に傍点]するより外に方法なし、とても禁酒[#「禁酒」に傍点]なんぞは出来ない。

 七月三十一日[#「七月三十一日」に二重傍線]

[#ここから2字下げ]
我昔所造諸悪業――
皆由無始貪瞋痴――

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