なかつたけれど、熊本はやつぱり鬼門だつた。
○出かけて、帰つてきて、庵のよさ、自分のよわさがよく解る、山頭火には其中庵の外におちつくところなし。
柿の落葉、茶の花、みんなよろしい。
がつかりして、ぐつすり寝た。
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 つかれてかへつてきて茶の花
・伸き[#「伸き」に「マヽ」の注記]のびてゐて唐辛赤うなる
・すすきをばなもうららかにちるや
・まいてまびいてつけてきざんでかみしめてゐる
   水前寺にて
・水は秋のいろふかく魚はういてあたまをそろへ
・柿が赤くて住めば住まれる家の木として
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 十一月二日[#「十一月二日」に二重傍線]

晴、風。――
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さびしけれどもしづかなり
まづしけれどもやすらかなり
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すなほに、すなほに、そしてすなほに。
夜、樹明来、しんみりと話す。

 十一月三日[#「十一月三日」に二重傍線]

しぐれ、明治節、農学校運動会の騷音。
東京の井師五十歳祝賀句会へ打電――
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アキゾラハルカニウレシガルサントウカ
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野菊、りんだう、石蕗
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